自転車で地域&人づくり
日本の自転車ロードレース界が、なぜ世界から遠ざかっていくようになったのか
日本の自転車ロードレース界が、なぜ世界から遠ざかっていくようになったのか

日本の自転車ロードレース界が、なぜ世界から遠ざかっていくようになったのか

2020年2月に、「時代の変わり目」という記事を公開していました。

そのときは、新型コロナウィルスが蔓延する直前で、国内トップリーグの分裂もまだ誰も思いがけていませんでした。日本の自転車競技界は世界に近づいていくのか、それとも悪い方向に交差してしまうのか、両方の可能性がまだ残っていました。

当時は、次のポジティブ要素を注目していました。
・「五輪に出場するため」の争いが日本のレベルを引き上げてくれていた
・競技状況や力関係の構図が変動する前兆があった
・あくまでもポイント狙いとはいえ、宇都宮ブリッツェンが初めて欧州のレースに出場した
・実業団×学連の二重登録や、念願の新リーグの構造が実現された/される予定だった

しかし、「果たしてそれは日本国内の全体レベルの安定的な向上に繋がっていくのか?心配要素も少なくありません」と、次の点を懸念していました

・JBCFが新リーグの発表を通じて積極的な姿勢を見せつつも、レース数が急減し、理事長の右京氏が組織委員会の仕事と兼務を始めていた
・修善寺CSCが利用できなくなったり、予算縮小でナショナルチームの強化指定選手も半分程度に削減されるなど、政府や連盟から選手育成より東京五輪の短期施策が優先されていた

「果たして「底辺を拡げる」作業をなくしては「上から引っ張る」方法が成り立つのか?明らかに時代の変わり目に立っている中で、いかに2020年以降のことを視野に入れて時代の変遷を迎えるかが、新時代の展望を大きく左右しているでしょう。」と、疑問的な結論を挙げていました

その時から、2020年と2021年シーズン、二つのシーズンが経過しました。新型コロナウィルスが世界中に蔓延し、東京オリンピックの延期が決まり、トップリーグがJBCFとJCLに分裂するなど、想定外の方向に流れていきましたが、それも含め、間違いなく「時代が変わった」といえると思うので、ここ2年の出来事を踏まえ、現状を分析し、いったん評価を出してみたいと思います

①若手を中心に、競技環境が悪化している

・「オリンピック優先」の短期ビジョンで取り組んできた

→例年育成の中心となっている修善寺サイクルスポーツセンターがオリンピックの関係で2年間利用不可能になったり、U23以下のナショナルチームの活動予算が削減されたりと、JOCやJCFは将来の可能性を広げるより目の前の結果を求める施策を選択したように伺います。

・ヨーロッパに比べると、中止された大会の割合が大きく、未だに持続可能な運用方法(ウィズコロナ運用)に至っていない

→ヨーロッパ各国の感染状況が日本より何倍も酷かった時期があったにも関わらず、しっかりした施策を講じることで、立ち直りが速く、通常とまでいかないまでも、2020年は育成の基盤となるコアなレースはしっかりと残していましたし、2021年はウィズコロナの運用方式を見つけほとんどの大会を開催できました。一方で、日本では2020年でも通常に戻る場面まであったにもかかわらず、大会の中止が相次ぎ、今でも光が見えない状況が続いています。この状況が続けば続くほど、限られた時間で詰められる経験や、トレーニングの強度の差がより広がっていきます。この差を、この世代の選手がこれから詰めていき、いつかワールドツアーにたどり着けられるとは現実的に考えられないので、数年にわたる世代を犠牲にすることになるといっても過言ではないと思います。

U19以下は全日本選手権が2年連続中止に

→本日、U19以下の全日本選手権の中止が発表されました。去年に引き続き、2回連続の中止になります。その結果、2003年生まれの選手は全日本選手権の成績を残すことができませんでしたし、2002年と2004年の世代もこの影響を食らっています。一見、全員同じ状況におかれているので不公平はないように見えますが、日本国内で世界的に評価されている唯一の大会ですから、今まで扉を開けてくれていたきっかけを一つの世代が丸々失ったようなものです

そもそも、大会が少ないなかで、全日本選手権が開催されないことは、モチベーションに大きな影響を与えることもいうまでもありません。

②業界内のバラつきが酷くなっている

個人的には、日本国内の自転車業界の分散状態を日本と世界の差の根本的な原因と見ています。このたった2年間で、少しずつまとまる傾向にあったその分散状態が恐ろしい勢いで更に広がってしまいました。

・トップリーグの分裂

→JBCFの中からほとんどの地域密着型プロチームと、企業スポンサー型チームの一部が今までともに盛り上げてきた「Jプロツアー」を離れ、「ジャパンサイクルリーグ」という新しいリーグのもとに集結しました。背景には、ずっと興味深く観察してきた数年前から続いていた価値観と考え方の違いがあります。この状況に対しては個人的な見解があり、今回の記事の趣旨ではないので省略しますが、確実に言えるのは、我々の大好きなスポーツが弱っていた時期に、分裂が起こってしまうことは、双方それぞれがいくら頑張っても、競技レベルの低下につ繋がってしまうことです。

・衰退傾向にあった伝統や歴史の長い組織や古い価値観が前面に戻った

→自転車ロードレースにおいては、日本とヨーロッパは天と地ほどのレベルの差があり、現状を変えていかなければ追いつくこともないことは、誰も否定しない事実です。しかし、コロナ禍を迎てからは、入国制限の関係で外国人選手との接点が突然なくなり、JBCFが「原状回帰」を訴えたり、基盤の丈夫な高体連、学連やJKAなどは既存のサーキットコースを活用して基盤を固めるなどして、結局変わりつつあった自転車ロードレースシーンが過去の状態に引き戻されたように思えます。これは、安定を取り戻したという意味では良いことかもしれませんが、現代の若手選手のニッズや野望に答えられるか、そして世界との差を詰める方向に進んでいくかといえば、疑問が残ります。そして、この中で育ってきた世代の中では、保守的な価値観を養成することにも繋がるのではないかと心配しています。

③向いている方向は、世界ではない

・世界を見据えるプランの存在が消え去った

→2019年3月にJBCFが発表した新リーグの構想は、ツール・ド・フランスを頂点とした世界の仕組みで戦える選手の輩出を最大の目標として掲げており、分裂を予覚していた多少の矛盾はあったものの、それに向かって自転車業界全体を統合させる明確なプランはあった。しかし、現実に引き戻されたのか、その当時の方向からは大きく逸れてしまい、原状回帰を掲げる保守派と国内の興行的なプロ化を目指す改革派の二極に分かれる始末。その結果、どちらからも世界に繋がる現実的なビジョンが示されておらず、世界が更に遠ざかってしまったように見えます。

そして、定期的に浮き上がってくる「世界を目指さなくてもいいのでは?」という議論。

最終的にJリーグを成功に導いたのは、ワールドカップで活躍する日本ナショナルチームでした。日本国民が期待しているのは、世界で戦う日本人の出現です。この挑戦を途中で諦めてしまうのでは、自転車ロードレース界で努力を重ねている選手、関係者、ファンなど、全てを否定することになってしまいます。世界のトップを頂点に据えなければ、誰もついてきませんし、世界が届きそうになってはじめて、一気に盛り上がるのが全ての競技スポーツの現実です。誰もが諦めそうになったときに、世界を掴むことに成功した若者こそ、次世代の大スターになるに違いない。今、苦しい時期を迎えているからこそ、若手選手には、必死に世界を目指し続けてほしいし、それを支える全ての関係者には、それに応えられるように、一層意識を高めてほしい。

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  1. Pingback: 日本の自転車ロードレース界が先進している部分について(1/2) – sisbos

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