自転車で地域&人づくり
日本の自転車ロードレース界が先進している部分について(2/2)
日本の自転車ロードレース界が先進している部分について(2/2)

日本の自転車ロードレース界が先進している部分について(2/2)

写真 © JCL公式

「日本の自転車ロードレースが先行している部分について」ということで記事を作成しましたが、先日はその第一弾として、比較のために世界が抱えているいくつかの課題を取り上げてみました

今回は第二弾として、国内で特に注目や評価している取り組みを深掘して、どのように先行していると考えているかについてご説明できればと思います。

「スポーツ」と「まちづくり」について

2015年に「スポーツ庁」が設立され、2018年に「日本体育協会」が「日本スポーツ協会」に名義変更されたように、「スポーツ」という言葉が日本に定着し浸透してきましたが、本当に最近のことだというのもよく伺えます。日本の場合、「スポーツ」の前身は「体育」であり、その歴史的背景を踏まえると「教育」から交差してきた二次的分野のようなものに該当するとも言えます。そのため、今は「運動に対する認識」のすべてが世界共通概念の「スポーツ」にまとまってきたとはいえ、日本社会の中ではスポーツの位置づけがまだ少し特徴的な気がしています。

しかし面白いのは、社会の中で「身体運動」の立ち位置が「体育」から「スポーツ」へと移行している中で、「スポーツまちづくり」という新しい分野が生まれたことだとみています。スポーツを部分的に活用して社会や地域の発展に取り組むのは、世界各国にはもちろんあることですが、独立している一つの分野として研究されており、一つの業界にまとまってきたのが割と異例で非常に興味深いと思っています。

これはスポーツに限らず、「まちづくり」というコンセプト自体でさえ、私にとって日本に来るまでは馴染み薄かったです。自然災害、都市化や少子高齢化等日本特有の課題があるためかは分かりませんが、国や企業からローカルな団体や個人まで、社会が様々なスケールで個々の意欲のみならずコミュニティのニッズを満たす方向にも自主的に動いていることも日本特有の素敵な側面で、これから世界全体が直面する環境やエネルギー問題を乗り越えるために決定的なノウハウになるのではないかと思っています。

「地域密着型スポーツ」について

上記の論点に因んで、「地域密着」も簡単に直訳できない言葉の一つです。「地域密着型クラブはJリーグがヨーロッパから持ってきたもではないか」という疑問も聞こえてきますが、日本で考える「地域密着型モデル」はその先に進んでいると思います。なぜなら、ヨーロッパのスポーツは地域の中で生まれたものなので、本来の姿が「地域密着型」です。日本のスポーツは上記のとおり教育の一環として生まれ、社会の中で位置づけられてきたので、「地域密着型モデル」は後付けで導入されイノベーションです。結果的に何が違うかというと、ヨーロッパは昔からの固定概念を引き継いでいるのに対して、ゼロから「地域密着型モデル」を作り上げた日本はヨーロッパ、アメリカ、アジア等の仕組みを自由に参考にしつつも、現代社会にフィットするように独自の取り組みも活発に取り入れた結果、昔のままに固定されているヨーロッパのスポーツシーンとは違って、地域のニッズに応じる形で新しいクラブやチームが多く誕生しており、新しい市場が出来き拡大しつつあります。ヨーロッパ人としては、その部分を羨ましく見ています。

自転車競技の例がいちばん分かりやすいです。ヨーロッパはどのスポーツでも昔からクラブ型に統一されている仕組みで、選手育成が成功している理由でもありますが、自転車競技の場合は地方自治体の補助金が主な収入源で、プロチームに関しては完全に企業スポンサー型ですよね。チーム単体で地域に密着し独自の活動だけでプロのクラブを成立させた事例は、ヨーロッパには一つも存在していません

そのため、10年前 Jリーグを参考に誕生した宇都宮ブリッツェンが「地域密着型モデルを自転車競技への導入」を実現したのは、日本初ではなく、世界初と言ってもいいのではないかと思っています。

「ジャパンサイクルリーグ」の挑戦

しかし、去年誕生された「ジャパンサイクルリーグ」(JCL)が目指しているのは、それを全国に広げ、ひとつの仕組みとして成立させることです。ただでさえ、日本語で意味する自転車競技の「地域密着型」プロチームは世界で一つも存在していないにも関わらず、それをシステマチックに成立させることができれば、アメリカのNBAのように、日本のみならず世界を動かせる取り組みが生まれることになると思います。

もちろん、自転車競技に関して世界レベルでも前例がないことだからこそ、その実現性を十分に疑うこともできますし、実際には初年度でいくつかの致命的なハードルが明かされましたが、リーグは既に存在しており立派な1年目を切ったので、これからどのように価値を生み出していき、システム全体を成立させていくかを非常に興味深く観察し研究していきたいと思っていまし、課題の洗い出しも含め自転車の可能性を信じている日本国民の皆さんが一丸となってこの新しい取り組みを支えていってほしいと思っています。

JCL一年目の総評及び今後の展望と課題について、後日別の記事で述べる時間を作れるように頑張ってみたいと思います。

まとめ

先日の第1弾では、サイクルスポーツに関して世界最先端を走っているヨーロッパのシステムが抱えている課題を取り上げ、今回の第2弾では、日本が起こしているイノベーションがどうのようにそれに応じられるのかについて述べました。表面しか触れていませんが、ツールド東北や富士ヒルクライム、ルーツ・スポーツ・ジャパンの「ツールドニッポン」や分散型イベントへのシフト、競輪業界で革命を起こそうとしている「PIST6」やシクロクロスの普及など、深掘りしていけば例に挙げられる取り組みは他にたくさんあります。世界に視点を変えることで、皆さんがヒントになるような情報を見つけられたら嬉しいなと思っています。