外国人選手の意見 第4回
外国人選手の意見 第4回

外国人選手の意見 第4回

今日は、フランス遠征に向かう直前、日本においてサイクリングを管理している組織についてブログを書いた。

この記事は、前から書くつもりだったが、日本ではサイクリングの組織が雑然すぎて今でも全て身に付いたとは言えない。

今まで、世界中で走ってきたが、UCIによる公益財団法人自転車競技連盟が大会を開催しない国を一つしか見つけなかった。日本だ。

日本では、公益財団法人連盟ではなく、いくつかの私設法人によって自転車競技が開催されているということで、日本の自転車界は自由主義というシステムである。経済では、自由主義は当然なシステムのように考えられる。お金を目的にする自由市場では、会社が売り上げに通じて競争する結果、物価が下がると共に、品質が上がるはずであるといわれている。しかし、スポーツ競技では、お金を目的に考えないはずなので、そういったシステムは相応しくないだろう。

フランスでは、100年以上にわたってFFC(フランスサイクリング競技連盟)がサイクリング界を管理してきた。もちろん、それぞれの地域による地域連合会もあるし、他の国内連盟もあるが、自転車競技は全て、基本レベルから国際レベルまで、子供からベテランに及ぶ範囲を対象に、公益財団法人自転車競技連盟によって管理されている。

では、何故このような相違点があるのか?自転車競技を含めて、日本のスポーツ界では、「実業団」という組織がある。「実業団」というのは、競技と会社を繋げるシステムである。野球のように盛んなスポーツの現状から考えてみると、うまく動いているように見える。部活、学連、そして実業団、日本人野球選手には世界への道がほぼ決まっている。

自転車競技における実業団を管理しているのはJプロツアーという組織である。私設法人組織として、利益を目的にしている自由市場によって動くJプロツアーのような組織は、スポーツ競技と共通点がある。例えば、スポーツを発展させるにも、利益をするにも、選手の人数、大会の数などを増やすことが必要である。

ところが、共通点があるとしても、目的は違う。公益財団法人連盟は、利益したお金で、選手、レースの開催者など、つまり自転車界に関わっている他のプレイヤーに向けて投資する。結果としては、エントリーの値段が下がったり、ライセンスの価格が下がったりする。それゆえ、フランスではエントリーが1000円かかるレースは高いと言う。その反面、簡単に言えばただの会社なので、私設法人連盟は、利益したお金で、更に利益をしようとする。無限な悪循環だ。

私設法人連盟は「自転車が発展するには、社会にだんだん自転車の興味をわかせて、メジャースポーツとしてサイクリングを盛り上げることしかない」という論法だ。経済の場では、当然な論法だろうが、サイクリングは経済と違って、単純に売ったり買ったりするものではない。自転車競技に関する需要が増えるからといって、自転車競技全体が発展するわけではない。

私だけではなく、外国の状況を知っている人々はほとんど全員同意だし、尚更、この意見に賛成していながらJBCFに参加している人はとても多くいると思う。その矛盾は、チーム、主催者、選手など、つまり現場で動いている全てのプレイヤーに与えられるお金をJBCFが独り占めしていて、独占状態を作っているからにほかならない。

日本首位を狙っている前年の総合優勝チームが、国内最高峰の大会に登録することもないのは、普通だと思うか?

勿論、JBCFに限らず、JICF、ホビーレース 、つまり全ての私設法人連盟でもそうだ。12キロを回る学連レースが5000円もしたり、15キロほどのヒルクライムが1万円を超えたりすることは普通ではない。日本の社会全体がそういう風に動いているから、スポーツの世界でもそうだと思うかもしれないが、スポーツはビジネスに限らない。ある程度からは、政治の問題と違って、協力状態を立てないと発展していけない、と私は思い込んでいる。

選手としてJBCFを走っている私自身は、この辛い現状の影響を受けていることに気が付くこともない若手選手、ボランティア、ホビーレーサーの方々には申し訳ないと思うようになってきている。成績を重ねていけばいくほど、声が届くのではないのかと思うので、これからも変わらずJプロツアーを走っていく。