ツアー・オブ・ニューカレドニア、レースレポート
ツアー・オブ・ニューカレドニア、レースレポート

ツアー・オブ・ニューカレドニア、レースレポート

世界中のアマチュアレースの中で最もステージ数が多い、10日間で12ステージを重ねるツール・ド・ニューカレドニアに出場してきた。天国に一番近い島と呼ばれるニューカレドニアは初めてではない。もう3回目なんだが、ヨーロッパのレースと違う雰囲気がすることでいつも最高に楽しい2週間が過ごせる。レースが終わったあと、伝統的な伏屋に泊まったり、地元の方々にご馳走を用意していただいたり、真っ白な砂浜でゆっくりしたりすることがこの2週間の日常生活。

しかし、甘いレースでもなくて、参加人数が60人ほどに限られているため、毎日激しい展開が繰り返す中、10ステージ、10回逃げ切りになる。特に、ステージレースの少ない日本で活躍している若手選手には、とてもおススメな経験。毎年、元プロ選手の福島兄弟が監督するボンシャンスを連れていて、今年も日本人選手は6人参加していた。

私は、2013年と2014年、アンダー1年目と2年目の頃に参加したことがあって、思い出の多いレースだ。2014年は、毎日激しいアタックをコントロールに努めて、総合リーダーのチームメイトを引っ張って総合優勝を果たしたこともある。しかし、個人的には、ステージ9位、8位、7位、5位、4位、3位、トップテンの順位に何回か入ったことはあるが、2位と1位だけには届かず、やり遂げる必要を感じて今年3回目の出場を決めた。

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第1、2、3ステージ、ウベア島での開幕

最初の3日間は、ウベア島という天国に似ている環礁で平坦ステージが行われた。各チームが地元の家庭に世話してもらって、毎晩伝統的な伏屋に泊めて頂いた。ご飯は、村の広場で集まって、市民の人たちが作ってくださった料理を、主催者、記者、審判、選手、レースの関係者全員、毎日一緒にご馳走した。

コントロールしにくいステージレースでは、第1ステージは、総合ランキングを決めることが多いので、最初からアタックに加えてチームメイトと2人で14人の勝ち逃げに乗ることが出来た。有力選手全員入っていて、タイム差が2分40秒まで広げてスプリント勝負になる。残り1キロのところ、現在フランスU23チャンピオンのラフェー選手が単独アタックして、チームメイトがコントロールしてくれるので、完璧な展開になりそう。しかし、残り500メートルのところ、スプリントを始めるときにチェーンが落ちるせいでペダルが外れて、路面に当たっていきなり落車。表彰台が見える時点で落車するなんて最悪だし、これから残り11ステージは傷だらけのままの出走になってしまう。結果は、仕方なく14位だが、タイム差は優勝者と同タイムにしてもらう。

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第2ステージは、12キロの個人TT。タイムトライアルが苦手ということで、特に狙うステージではないが、総合に大きい影響を与えると予想されるので、全力で挑どむことに。しかし、機材の移動が遅れるせいでスタート時間も遅れることになって、自分のスタート時間が知らずに1分40秒遅れの出走。結果は、3分半ほど失って、総合14位のまま…

第3ステージは、必ず逃げに乗って優勝に絡むという作戦で出走。第1ステージと同じく、脚が非常に良かったが、スタートから何回かアタックを繰り返しても、中々決まらない。50キロほどのところ、位置を少し落としていたタイミングで7人が飛び出してそのまま決まる。最悪…後ろの集団スプリントに加えてみるも13位。

第4、5、6ステージ、北の端っこまで

翌日はヌメアに戻って休日。金曜日から、ヌメア辺りから北部までの上がりが始まる。道路は一本しかないので、3日間にわたってずっと同じ道路を走る感じ。

休日は休むことが出来たが夜は傷が痛すぎて徹夜をしてしまった。そのせいで第4ステージの調子は最悪で1日集団の後方でのんびりすることに。チームメイトが勝ち逃げに乗ってくれて1分半先行して、総合6位に上浮。私は集団スプリントで違う方向に先導されてしまったが集団と同タイムにもう一回してもらった。

第5ステージは130キロほどの最長距離。チームメイトが入った逃げが再び先行して、タイム差が徐々に広がる展開に。2分、3分、4分…後ろはリーダーチームがコントロールできない。アタックが再開した最中にチェーンを落としたせいで千切れて、車を使うのが固く禁止されているレースなので二度と戻らないかと思い込んでいたところ、最後の力を尽くして登りで飛び出して奇跡的に復帰。その時、タイム差は5分まで広がっていた。有力選手のアタックに何回か反応するも、追走集団が形成されない。残り30キロ時点で、遂にばらけてくると脚が終わってしまって、後ろのグルペットで完走。チームメイトが追走集団に6分程の差をつけて、見事に総合2位に上浮。私は11分遅れて16位に撃沈。

第6ステージでリベンジして必ず逃げに乗ると決心。30キロ程アタックを繰り返した末、やっと逃げる。しかし3人だけ。タイム差を早くだけ広げようとして、30秒まで開くも、山岳賞の登りで有力選手のアタックで集団がばらけて、アタックの最中で吸い込まれる。逃げていたせいで6人のできた先頭集団に入れず、追走集団に位置を取る。しかし追走にはリーダージャージを発見!チームメイトのためにコントロールして、総合首位に上浮!私は11位。

第7、8、9ステージ、総合優勝を目指しての走り

チームメイトがマイヨジョーヌ!しかしチームは彼、私、集団に残る力すらないもう一人という3人に限るので、きつい日々が予想される…第7ステージは3,5キロ、平均勾配11%のアモス峠を含む、ハードなステージ。序盤から、アタックが続く中、総合に絡む選手をチェック。しかしチームメイト本人を含む10人ほどの逃げが形成される!最高だ。しかし、少したってから、小さな登りを使って他の有力選手が飛び出して先頭集団が20人弱に。それはまずい、私も飛び出してみて、先頭に合流。そのまま山岳賞が続くアップダウン区間に入る。先頭集団が絞ってくるが今日は脚が良い、峠を先頭で超えられそう。しかし、下り区間で先頭から総合2位と4位の選手が差をつけてそのまま先行。すぐに先頭に出て集団を引っ張るが、次の登りに入るとカウンターされる。ずっと20メートルぐらい遅れて登って、頂上付近でやっと追いつくも、ギアを変えたら、チェーンがいきなり落ちてしまう…後ろには誰もいなかったし、回復する時間もなかったので、追いつくことはできなかった。追っていた集団がどんどんと差を開けて1分半先行でゴールして、チームメイトが総合2位に戻る。ミスをしていなければ、レース展開が変わって、マイヨジョーヌを守っていたかもしれない…自分の大ミスで反省。

第8ステージは、総合首位ではなくなったので攻撃的な作戦に復帰。何回かアタックに乗るも、また良いタイミングが見つからず5人を逃がして毎日と同じくそれが決まる。ステージ最高位を上げるために6位争いに絡んでみようと思って、残り2キロの左抜カーブでいきなり2度目の落車。砂利があって何故か自分だけが滑ってしまった…(そして後ろの2人も巻き込んでしまった)。しかし1回目の落車で回復しきれなかった傷に加えて更に傷がついた私だけが立ち上がれない…ディレーラーハンガー、ディレーラーが壊れているが何とか完走。しかし前回と同じく、午後は個人タイムトライアルもある…第9ステージの13キロの個人TTは、傷のままスペアバイクで完走。もう走る気がない…

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第10,11,12ステージ、悪夢のような閉幕

次の第10ステージは山岳ステージ。自転車は直せない、翌日にヌメアで解決できることを祈ってスペアバイクで完走するしかない。しかしスペア―バイクは10速に11速のホイルを付けた自転車…最初の40キロは、平坦だがダンシングができないし横風区間もあってしんどかったが何とかクリア。しかし峠にぶつけると腰が痛すぎて、身体がダメすぎて、すぐに千切れる…翌週の群馬に向けて無理をせずに楽なペースで完走をすることに。結果は、50分遅れて最後位、総合19位から39位へ撃沈。

第10ステージは、結果がもう目指せないし、チームすら手伝えないので出走しないことにする。ヌメアでゆっくり休んでいたら、監督から電話がかかってきて、「一人の選手がレース中に死亡したので、レースが中止になって、これから帰る」との恐ろしい言葉が…

総合3位のチームメイトを助けようとしていた、マディソンの元ジュニアフランス王者Mathieu Riebel(マチュー・リベール)選手が、下り区間で左車線を使って逆走の救急車に衝突して死亡。20歳だった。知り合いではなかったが、このレースは2週間にわたって、60人の参加選手がずっと一緒に生活して、皆お互い仲良くしていて、大きい家族のように生活するので、家族の一員が亡くなるというのはとても辛い気持ち。じかも、自分が2回落車したせいでリタイアしていたタイミングで。この日、出走していなくて良かったと強く思った…

結局、リタイヤしていたにも関わらず、レースが中止になったので、第12ステージはレースの参加選手、および自転車に乗っている全ての人たちと一緒に、レースを競わずにコースをパレードでゆっくりとゴールまで進みました。気持ち的には、とても辛い1日でした。

それでツール・ド・ニューカレドニアが終わった。レース結果が第10ステージに終わったので、チームメイトが2位のまま。2013年と2014年と違って、今年は1回も10位以内にはいることが出来なくて、良いレースではなかった。しかし、超回復を目指して今週の追い込みをJプロツアー最終戦の群馬大会に活かしたいので、これから回復して最高の調子で表彰台を目指したい。

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