「外国人選手の意見」を、毎回沢山の方々に読んで頂いている様でありがとうございます!
そしてその購読者の多さから、もし自分の今までの経験を日本のサイクリング界にシェアすれば、役に立つかもしれないことに気が付きました。という訳で、月刊にしようかなと思っています!これからは、毎月日本の自転車界に関する一つ一つの点を議題に、書いていこうと思います。
第三回の記事を書こうと思ったのは、偶然、私のニールプライド南信スバルサイクリングチームがよく参加する「Coupe de AACA」というレースのWEBサイトに載っている「コンセプト」の説明ページを読んだからです。そのページは、フランスで走った経験があり、同じようなレースを日本でも行おうと思いCoupe de AACAの主催者になった、加藤康則様が書いたものです。とても良い考えだと思いますので、そのレースのことをご存じではない方でも、是非ご覧になってください。
http://www.coupedeaaca.com/コンセプト
私は、そのレースに二回参加したことがあり、二つの違うコースを走りました。一つ目の長良川サービスセンターというコースは、5キロぐらいの平坦なコースで、100キロぐらい走ります。そのコースは確かに、フランスにおけるレースの展開と少し似ています。しかし、実は、毎回展開が同じであり、それに気が付く選手は、毎度必ず逃げに乗ることが出来ます。
最初は、みんなが全力で逃げに乗ろうとして、なかなか決まらない展開になっている様な時に、先頭集団が出来て逃げが決まります。なぜいつも同じかというと、スタートしてすぐ、平坦なコースでほとんど誰でも前に出られて逃げに乗ることができますが、40分ぐらいが経つと、疲れる選手と疲れない選手がおり、60名だけの集団ではとても決めやすくなります。そのことを知っている選手は、たとえ弱くても逃げに簡単に乗ることができます。
ところがそれは、フランスにおけるレースの展開は、似ているとは言ってもやはり違います。フランスでは、40分ぐらい経つと、レースの展開が変わる可能性が高いことを知っているので最初の方に動く選手と40分が経ってから動く選手がいます。だから、レースの展開を予想するのは難しいのです。。
そして、二つ目のいなべというコースは、2キロもない、コーナーと坂が多いコースです。長良川サービスセンターのコースよりキツくて、Coupe de AACAは5人くらいしか完走できないというレースなのでいつも人数が少ないレースになります。それに、意外とフランスのクリテリウムのように距離が長いので、大人数での正しい走り方が分かるチームが参加すると、簡単に勝つことができます。この手順を説明します。
最初から逃げようとします。逃げに乗っている選手の人数が他のチームの選手の人数より多くない限り、ローテーションに入らない様にします。距離が長いため、いつか必ずその状況になります。そうなると、もう一回逃げに乗っている選手達は再びアタックしさらに逃げようとします。同じチームの選手だけの先頭になるまでに繰り返します。そこで、他のチームの選手が全力で追い付こうとしている間に、メイン集団に残っているチームメートは勿論ローテーションには加わらず、他チームの選手達が疲れることを待ちます。先頭集団にメインが近づいたら、キツいところでアタックして先頭に乗ります。
こうやって、逃げに乗っている味方チームの選手の人数がどんどん多くなるとともに、相手チームは消耗している為レース展開は楽になっていきます。
その走り方をしたおかげで、このコースに2回参加して、一回目(第4戦)は1位、2位と3位になり、二回目(第7戦)は1位と2位を獲得しました。
そういえば、こういうチームでの走り方に関して、外国人選手の意見第一回ではCoupe de AACAで見てびっくりしたことを書きました。
愛三工業レーシングチームの選手達は大人数で逃げに乗ったにも関わらず、メイン集団も愛三工業の選手達が牽引し、結局私のチームメートのJayson Valadeに負けました。つまり、自分達の逃げを自分達で潰して負けたのです。
しばらくして、日本人のチームメートに愛三の選手からのメッセージを伝えてもらいました。愛三にとっては、Coupe de AACAのレースは練習レースだから、監督が指令として勝利を目指すのとは別に、全力で走ることを伝えたそうです。
しかし、練習というのはどういうものですか?練習だからこそ、みんなの力が合わせやすい、レベルの低いレースでチームとして走る練習をしないと、上のレベルではどうやって同じようなことが出来るようになるのですか?
我々は、レベルの低いレースでも、レベルの高いレースでも、良い結果を得る為に一生懸命頑張るべきだと思っています。
フランスでは、優勝を何よりも目指しています。でも、優勝することが出来ない場合もあることを考えない様にするというのは間違いです。そのように考えると、優勝がもうできないからーと、諦めてしまうことになるでしょう。20位という結果だけで満足する選手も勿論います。
でもどうやって、5人しか走らせないレースで進歩できますか?どうすれば、基本のステップが欠いているなか優勝を目指せますか?
チームメートがワンツーフィニッシュした第7戦の時に、キナンサイクリングチームの選手2人と6位を争っていたのにも関わらず、先頭に追い越されたときに、残り15周以上で降ろされました。最後の15周ぐらいは、5人しか走っていませんでした。広島からせっかくレースに来てくれている選手が、たった10周しか走れなかった。
その時、レースの関係者とかなり話し合いました。「なぜそんな意味が無いことをするのですか?」と私からの質問に、「規則で決まっていますから。」という返事でした。
今まで、このようなヨーロッパのレースに似ているレースを主催して頂いて、とてもありがたく思っています!
ですが、このことに関しては、選手全員を完走させてきちんと順位を与えて頂きたいです。それがきっと、日本のサイクリング界をさらに成長させていくと思います。
あと最後にもう一つ言いたかったのは、フランス語の名前を付けようと考えたら、母音の影響でCoupe de AACAではなくCoupe d’AACAが正しいです!
Tom Bossis
Neilpryde – Nanshin Subaru Cycling Team
Photo : © Syunsuke FUKUMITSU, KINAN Cycling Team