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4月 12 2020

世界で戦えるプロ選手になりたい高校生へのメッセージ

ヨーロッパでプロ選手になりたいですが、どうすればいいですか?」と、毎年、何十人の若手選手から問い合わせを頂いています。日本に来てから問い合わせが続いているので、当初アドバイスを提供させていただいた高校生に関しては、今はどういう進路を選んで、実際にどういう結末になったかもはっきり把握できていて、日本国内における選手育成の大失敗を、何もできずに見送っていることになってしまっている自分がいます。

はっきり言わせて頂くと、本当に絶望するほど、高校生の皆さんが同じ悩みを持っていて、同じ選択肢を選んで、同じ失敗を繰り返しています。それを見渡している自分は痛いほど悔しくて、今の原動力の一つになっています。

自分の身の回りでは、間違っている認識が常識化してしまっていて、指導者も選手も偏っている方向に向かっている状況を良く目にしているので、その間違っている認識を、このブログを通じて、少しでも改善させることに貢献できればと思います。

1.「若い頃からヨーロッパに行かないとプロ選手になれない」

「プロ選手」をニッポ絡み以外のプロコンチネンタル登録以上のチームと契約をした選手に定義すると、今の成功事例の中では、ほとんどの選手が若い頃からヨーロッパの道を辿った事実が否めません。だからと言って、プロ選手になるには、ヨーロッパに行くのが早ければ早いほどいいとは限りません。ジュニアカテゴリー以前でヨーロッパへ行けるには、学校を捨てなければならない場合がほとんどで、プロ選手になれないという最も可能性の高い将来を犠牲にすることになってしまうので、非常に慎重に選択すべきです。ヨーロッパへ行くのは、最終的には必要になりますが、結局ヨーロッパへ行って壁にぶつかって日本に帰ってくる選手が95%を占めているわけで、なぜそうなったのかを考えると、ヨーロッパの経験を得にできる最低限のレベルを足していなかったからがほとんどです。

どういうことかといいますと、ヨーロッパのホビーレースを走るようでは日本のトップレースをの方は強い選手と一緒に走れるわけで、ヨーロッパへ行く意味がなくなります。そして、最低限の語学だって日本国内でも勉強できるし、良い指導者さえいれば最低限の走り方や実力も身に着けられるはずです。

ヨーロッパの育成モデルは、「順番に段階を踏む」コンセプトなわけで、段階を飛ばしてでもヨーロッパへ行くようでは、まったく何の意味もありません

2.「大学にいけばプロになれない」

有名な指導者からとある選手が休学させられたり、進学を諦めさせられたりしている話を、残念ながらよく耳にしています。それは、非常に無責任な行為だと思います。プロ選手になる可能性が非常に低いわけで、大学を卒業した方はよっぽど可能性の広い未来を迎えられることは間違いありませんので、本来は若手選手の教育を考えることこそ指導者の責任です。

自分が親しいフランスの育成組織で例えると、AG2R la Mondialeのu23下部組織であるChambéry Cyclisme Formation(シャンベリー・シクリスム・フォーマション)の選手は去年、92%の卒業率で、毎年100%に近い卒業率を誇っています。そもそも、進学していないと所属できないわけで、外国人選手は言語学校に通わせられています。よく語っていますが、ロマン・バルデ選手ですら、大学院を卒業した年にツール・ド・フランスで3位に入っています

進学することで、ヨーロッパに適応するためのオープンマインドや社会性、コミュニケーション能力、時間の有効的な使い方が学べる最高の機会でもあるわけで、逆にプラスになる経験値が多いでしょう

3.「日本の大学に進学してもプロになれる」

だからと言って、進学するのがプロになるための道筋というわけでもありません。ヨーロッパの大学は、期末試験のある5月下旬から10月まで夏休みで授業がないし、それ以外の時間では、強化指定選手なら時間割が好きに組めたり、出席義務が免除になったりします。また、フランスの場合は学費は年間10万程度しかかかりませんし、いつでも専攻や大学を転学できます。

そして、日本は学連というのがあります。去年からは、実業団と学連が両立できるようになりましたので、大学生選手にとっては競技環境が非常に良くなりましたが、いまだに矛盾しているところが残っています。まず、インカレと全日本学生以外の大会は距離が非常に短く、走り方はヨーロッパのロードレースと全く違うので、練習や経験になるかどうかは微妙なとこるです。同様経験の少ない大学生を相手にしているので、チームプレイ、走行技術、位置取りや走り方等を回りの選手から学ぶことはできません。そして夏休み期間中にインカレがあり、合宿がずっと続いたりしているので、ヨーロッパ遠征に行ける機会もそうは多くありません。さらに、インカレを優勝したとしても、世界からみたときは何の価値もないので、実績にもなりません。学連を走る場合は、その辺りの自覚が必要で、世界的なプロ選手になる面では、実業団と合わせて競技日数が増やせることと、学費が免除して頂けることが、唯一のメリットでしょう。

進学すべきなのか?しないべきなのか?というのは、ケースバイケースの問題で、条件がそろえば、いずれも不可能ではないでしょう。但し、ほとんどの場合は、進学をした選手の方は明るい将来が待っている場合がほとんどなのも事実です。

4.「UCI登録チームに所属して、格の高いレースを走ればいい」

世界で走れるプロ選手になりたいという意向があれば、アジアのUCIチームへの所属は強く諫めます。なぜなら、国際的にはUCI登録選手はプロ選手という解釈があり、プロの大会に出場できるようになりますが、UCIアジアツアーで勝ちまくってもレベルやレースの質が違いすぎてヨーロッパのプロチームは参考にすらしてくれないし、日本の大学生選手、又は大学卒業生選手にはUCIヨーロッパツアーで上位に入るための知識や技術が身に付けられる場がないので、夢のような世界です。要するに、ヨーロッパのプロチームがスカウトしているヨーロッパのアマチュア大会に出場権を失ってしまうので、実質世界への扉を自らが占めるようなものです。

具体的に例えると、ニッポの日本人選手は(ヨーロッパ経由で入団した別府選手を除いて)ほぼ全員、UCIアジアツアーの大会でしか実績が作れず、ヨーロッパツアーでは完走がやっとの世界で、その多くが日本に帰ってくることは、同様の原因です。はっきり言ってしまえば、このシステムを導入した人たちは、プロになるための正しいパイプを現時点ではまだ作れていない(順番を守っていない)ということでしょう。

5.「日本ナショナルチームで海外の経験を積めばいい」

これも大きな勘違いです。ナショナルチームというのは、経験を積むための場ではなく、実績を作るための場です。要するに、個人として、あるいはチームの一員として勝負に絡めることができない選手には、そもそもネイションズカップの出場資格がないわけで、それが可能になっているのは、たまたま日本で強い選手が揃わないからです。極端に言えば、完走もできないネイションズカップに出場する唯一のメリットは、いくら日本で優勝していても世界の中では自分がいかに弱いかを選手に自覚させることだけで、そう考えると、その前の段階である各国のトップ大会で勝負をする経験の方は時間が有効的に使えると考えられます。

なぜなら、ネイションズカップを走っているヨーロッパの選手たちは、年間50レース以上を走っていて、その激しい争いの中でそれぞれのナショナルチームに選抜されている選手なので、県大会、地方大会、インターハイ、全日本選手権、国体だけの、年間10レースにも達していない日本人選手とは経験値やレース強度の次元が違います

逆に言うと、ネイションズカップで上位の実績が作れていれば、ヨーロッパでは大きく評価されるので、それができるための経験値と実力を、まずつけていきましょう。

 

最後になりますが、日本からワールドツアーに繋がる道が存在していないことがそもそもの原因で、それは今の世代の選手の責任ではなく、前の世代の選手であった今の世代の指導者の責任であって、指導者より若手選手の方が正しい場合を良く目にしてきました。しかし、今の世代の選手が、次の世代の責任者として活躍してくれないと、いつまでもこの悪循環が続きます。日本から世界で輝くプロ選手になることの価値が非常に高く、それに見合った反省と工夫の繰り返しの末にあるので、前の世代の失敗事例をスマートに分析した上で、全力で挑戦して頂きたいところです。

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