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12月 20 2017

外国人選手の意見 第7回

こんにちは、Jプロツアーで戦っている東京ヴェントスの選手、そしてコーチでもあるトムです。

最近、プロ選手らしい練習を再開させたため、そして内部の仕事でかなり忙しくなったため、時間の余裕を求めるブログの更新がなかなかできない状態が続きました。

そんな中、先日、日本国内の自転車ロードレースを代表している「Jプロツアー」の方針が、運営会社JBCFによって発表されました。その時、担当しているチーム練習が予定されていたため、今年は欠席させて頂いて、後から二戸監督に発表会の内容を伺いました。内部で色々と噂が流れていた通り、2018年を準備期間としていて、2019年からJプロツアーの登録規定、ということは全体的な方針が大きく変化されるようです。

選手活動の面でも、チーム運営の面でも、私の活躍がそのJプロツアーに大きく関わっていて、自分の将来に影響を与えるぐらいの変化でもありますが、それよりも、日本の自転車界全体が大きく変わることを予想できるので、それについて強い意見を持っています。

加盟規定の更新を図る理由として、JBCF側は、競技としても興行としても自転車ロードレース界の価値を高めるために、日本のロードレースをプロスポーツとして定着させていく必要があると判断して、新たに加わった規定が欠かせない条件だと説明しています。

本場ヨーロッパと違って、日本のスポーツ業界には公的機関からお金が入っておらず、興行の面を発展させていかないとスポーツ自体が盛り上がらないのは日本の事実です。自転車ロードレースもそれと変わらず、ロードバイクに優しくない環境、社会、文化の中で活躍していくことが非常に難しいです。

但しその反面、日本国内のシステムが独自になりすぎると、長期的な定着に要される国際化がまた難しくなって、競技レベルが上がらずスポーツ自体も盛り上がっていかない場合が出てきます。それは日本自転車界の現状です。JBCFを運営している方々も勿論、それに意識しているだろうし、意識しているからこそ基準を改善させようとしているでしょう。

しかし、長期的な発展を目指すのであれば、特に外から投資がほとんど入ってこないスポーツとして、お金の循環を上手く考える必要が出てきます。

 

さて、具体的に話しましょう。主な変化は以下の通り:

・2019年のJプロツアーチームは最大20チームとする

現在22チーム、それほどの変化はありません。但し、新しい登録規定では20チームも登録できるかどうかが本当の問題になってきます。

・チームは運営法人が行い、法人登記を必須とする

恐らく国際基準(UCIコンチネンタル登録基準)に合わせるための規定なので、正当な規定でしょう。

・運営法人の本社所在地をチームのホームタウンとする

そこは、「チームのホームタウン」は何かを明らかにする必要があるということなので、あくまで「ホームタウン」が必要になってくると予想できます。現時点では、国際プロ化を進ませた地域密着型チームは2つのみ(宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、両方とも自転車の県と呼ばれている栃木県で自転車文化を盛り上げることに成功しつつあるチームで、全国唯一の例)。他のチームは、運営法人に本社所在地はありますが、「ホームタウン」と言えるぐらいのものはありません。将来、地域密着型化を義務付けるということであれば、地元を見据えていないそういったチームを無視することになってしまい、国内プロサイクリングを代表するはずな「Jプロツアー」と国際プロサイクリングの差が更に広がるでしょう。現時点でも、その現象が起きつつあります(去年、総合優勝を果たした、現在アジア首位のチーム右京、今年アジアツアーを転戦している愛三工業レーシングチームとインタープロサイクリングアカデミーがJプロツアーをスキップすることにしました)。

外国人選手の出走は1チーム2名まで

自分自身日本在住の外国人選手として、非常に不利な条件でもありますが、それ以上に、日本の自転車界における全てのプレーヤーが「自転車選手は本場に触れるなければいけない」と満場一致で認識しているにも関わらず、日本の国内自転車ロードレース界に魅力を感じている本場から来た選手に制限付けることは矛盾にしか思えません。本場フランスのアマチュアシリーズ戦(DN1フランスカップ)において、同じくアンダー26歳か外国人選手を2名までにしていますが、フランスの自転車界には本場を知る必要はないので、理由は一致しません。

・チーム運営を専任で行うマネージャーを1人以上置く

・チーム登録料は年間200万円(税抜、今までは税抜100万円)

・1チーム2名以上の選手に月15万円(年180万円)以上の報酬を支払う

上記の3つの条件はすべて、新たに加わった規定で、それに備えるための準備期間が9か月ぐらいとされています。2017年までの規定で言うと、遠征費を除いて、Jプロツアーに参戦するために、110万円前後が必要だったと言ってもいいでしょう。しかし簡単に計算してみると、2019年以降は、それが8倍(!!!)近くになってきます。

2019年から、Jプロツアに登録している上で必要となる年間費(最低、遠征費を除いて)

・チーム登録料税込                                                                       216万円

・日本国籍の選手2名の報酬                                                          15*12*2=360万円

・一人のマネージャーがチームに専任できるぐらいの報酬          20*12=240万円

合計                                                                                                816万円

現在、年間予算だけで言っても816万円を集めているチームは半分でもないでしょう。フランスのDN1チームで言うと、登録チームの平均予算は1500万円ぐらいだと思っても間違いありません(半分以上となる公的機関からのお金込み)。

従って、2019年のJプロツアーに参戦して、今と同じぐらいの規模の活躍を続けることに必要な予算だけで、1200万円以上が必要になってくるし、更に国際の舞台の活躍と両立したい場合は、2000万円以上が必要になってくるでしょう。当然、海外に興味を持っているチームにとって、Jプロツアーに参戦するメリットが急激に落ちて、どちらかを選ばなければいけない状況になってしまいます。そうすると、予算確保できる地域密着型チーム(宇都宮ブリッツェン、そして多くいうと那須ブラーゼンとヴィクトワール広島)と、スポンサーと運営法人が一緒なチーム(シマノ、マトリックス、ブリヂストン)しか残りません。

更に、今の時点では、国際自転車競技連合(UCI)のコンチネンタル登録に必要な予算として、登録費として80万円ぐらいと、銀行保証として300万円ぐらい(実際に使われているわけではありませんし、具体的に言えばインタープロが2017年スポンサー無しで条件を満たすことができました)のみです。JCFとJBCFがどれぐらい方針を合わせているのかは分かりませんし、実際協調体制を取っているように思えませんが、JCFから新たに条件を付けることが考えられそうです。しかし、今の時点では、2019年から、同じ予算で、Jプロツアーに登録して国内最大レベルで戦うより、世界のプロレースを転戦する方が、お得です。

1年間でそれぐらいの予算を集めることができると思っているのなら、大した勘違いでしょう。宇都宮では、自転車を盛り上げるには数年間かかったし、今になっても全国で言えば、宇都宮は唯一の例になっています。自分自身、11月から自転車文化の浅い多摩地域の会社や市議会を回って、「自転車にこんな魅力があるよ、うちはこんな活躍をしているよ」と伝えようとしても、笑われたことが何回もありましたし、実はJプロツアーの総合6位に何の価値もないことを実感しました。

勿論、日本で自転車を盛り上げることは決して簡単なことではないのは理解しているし、自分でも毎日実感しています。ただ、日本についてから2年3か月が経って、来日したての頃でも今でも、日本の自転車界の未来を決めるプレーヤーが選んでいる方針に納得できないことは、変わっていません。

批判するだけだと何の意味もないので、今度は、決めるのが私であれば、どういう方向を決めるのかを具体的に説明してみましょう。そんな内容が、少しだけでも将来に良い影響を与えるが出来れば、嬉しいです。

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  1. sisbos.fr - 外国人選手の意見 第8回

    […] 前回の記事(2019年からの新規定について)はこちらでご覧頂けます。 […]

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